プライマリーケア

5. 現状と課題-PCT

PCTはケアパスウェイの設定、医療需要の抑制、医療機関感の競争の促進などの分野では、ほぼ期待通りの役割を果たし始めている。この背景には、幾つかの成功要因があると考えられる。

  • 独自性の尊重:PCT設置時より、各PCTに独自の取締役会を設置し、自治権を与え、自主性、創意工夫を醸成した。


  • 経営責任の明確化:各PCT 毎年の赤字は帳簿上年を越えて蓄積する、原則として赤字補填は行わなれないため、PCT自ら返済するまで残り続ける、という仕組みが導入されたためPCTが赤字を出すことが事実上許されなくなった。結果的にPCTが自らの財務に全ての責任を持つこととなった。


  • 外部人材の登用:PCTの主要なポストに一般企業の幹部、地方自治体の幹部など、PCTの業務に関係の深い経験をもった外部人材を積極採用。例えば、BerkshireWestPCTの最高経営責任者の前職はOxford県の社会福祉サービスの最高責任者。


  • 情報インフラ:医療ニーズ(ニーズIndex)、患者数、医療行為(例数)、コスト(Reference Cost Index)、治療成績、患者満足度に関して、全自治体、医療機関が同じ指標を用いてデータを提供しているため、保険者活動を進める上での必要データが揃っていた。


  • 必要とされる機能、スキルの明確な定義と現状把握:保健省主導で、Fitness-for-Purpose(必要機能確認)プログラムを実施。外部コンサルタント会社を使って、PCTに必要とされる機能、スキルを詳細にわたり定義し、全PCTに説明。並行して全国全てのPCTの現状を客観的に測定し、問題のあるPCTに対して改善を命じた。資料2は、実際にPCTの能力審査に用いられた項目を示している。

資料2

PCTの今後の課題としては、効果的な健康増進策の立案と運営、医療供給体制の積極的な見直し(特に病院キャパの削減)、機能の立ち上がりが遅れているPCTへのてこ入れがあげられる。