費用対効果向上への取り組み

5. 医療機関間の適切な役割分担とコミュニテイーにおける医療の重視

医療提供システム全体の観点から見た場合、医療をより低コストの環境を行なうことが医療費の効率的な活用の鍵となっている。以下、イングランドで医療機関間の役割分担の見直しがどのように行なわれているかを説明して行きたい。

Healthcare for London

イングランドが今度構築していこうとしている医療提供体制は、外科医で医療担当の副大臣であるLord Darziがリードをとってロンドン地区の医療提供体制の未来像を描いた「 Healthcare for London」に集約されている。地域医療と予防をキーワードにコミュニティー看護師とGPの役割をさらに高め、出来る限り多くの医療行為を病院の外で実施するという方針。具体的には、従来病院で行なわれていた診断、検査の機能の多くをGPに移すとともに、専門的な医療行為に関しても、病院ではなく、専門技術を持ったGPがクリニックで行なう。病院は、より高度な医療サービスに特化すると同時に、効率と医療の質の観点から集約を進める。

PCTの役割

全国のPCTは、このような国家的な流れの中で、各地域に相応しい医療提供体制の設計にあたっている。資料3は、ある地域のPCTが描いている医療提供体制の未来像だ。基本的な考え方として、病院で行なわれる医療行為をGP、そして地域の看護部隊へと移していくことがあげられる。例えば、病院の救急外来の前には、GPの当直医が配属され、病院でみる必要のない患者を担当する。また、退院を早めるため、地域内に訪問看護部隊と療養施設群を充実させ、それらと病棟との連携を強める。眼科、皮膚科、整形外科などの施術を病院外で行なうため、GPが共同で施設を建設することを支援する、など。

添付3

GPの役割

医療機関間の役割の見直しという面では、GPは治療ガイドラインの設計ということを通じて既に大きな影響力を持っている。前述の通り、GPはPCTと協力して、地域住民にとって最も望ましい治療ガイドラインの設計にあたっている。この際、治療をどの医療機関(つまりGPか、病院か)で行なうべきか、ということが重要なポイントとなっている。GPはコストの観点から可能な限り多くの医療行為を病院の外で行なうことを目標としている。これまで病院で手術し、入院していた患者を、GPの施設での日帰り手術に切り替えるなど。