費用対効果向上への取り組み

6. 費用対効果向上の手法と功罪

イングランドにおける医療の費用対効果向上の手法としては以下の3点があげられる。

1) 情報の見える化

まず、第一に情報が充実しているということが挙げられる。医療成果、コスト効果、病院の経営、など様々な面で、若干粗いながらも骨太の指標を設定し、その指標に関して情報を集め、開示している。

2) 基準、ガイドラインの活用

中立的で権威を持った機関が、科学的な情報と方法論に基づいて基準を設定し、それを現場が遵守する。ただし、基準に適度の「遊び」が許されており、これが基準の定着率の向上につながっている。具体的には、QALYの上限に関しても目安は3万ポンドだが必ずしもその通りの裁定が下されるということではなく、また、ガイドラインに対しても、事前に承認を受ければ例外は許される。PCTが地域のレベルでガイドラインを修正する余地もある。

3) 理念と方針の共有

現場の保険者、GP、医師、看護士とも全て、NHSの構成員であり、限られた資源を国民の健康の最大化に使うという理念が共有されている。また、医療行為のGP,、コミュニティーへの移行、予防の重視など、主要な方針が具体的な施策の検討にあたってうまく生かされている。

これらの手法は、合理的に構築されたもので、効果と経済性という観点からは成果をあげている。しかし、トップダウンな性格が強いため、医師の技術革新への意欲の低下、政府やNHSから示される短期的な達成目標に依存するターゲット文化を醸成している、などの批判もある。